2010年12月19日日曜日

屍鬼(四)





疑惑は確信へ そして崩壊が始まった

新潮文庫 小野不由美著

「屍鬼(四)」


【簡単なあらすじ】

夏野の親友、徹は屍鬼となっていた。
彼もまた人ならざる存在、屍鬼となったことに戸惑っていた。
そんな中、兼正の住人たちは徹に残酷ともいえる命令を下す。
「夏野を襲え」
屍鬼の存在に気づいた夏野を屍鬼になった親友である徹に襲わせようとしたのだ。
徹は人の心と屍鬼の本能の間で悩み続ける。
だが、家族を人質に取れられた徹に悩むことすら許されてはいなかった。
とうとう徹は夏野を襲ってしまう。

自らを襲った親友を夏野は許した。
あれだけ憎んでいた屍鬼であるはずなのに。
そして、夏野は死に、起き上がらなかった。
屍鬼とならず、その人生を終えたのだ。

一方、屍鬼の毒牙は尾崎の嫁に襲い掛かる。
それを知った尾崎は自分の周囲が最も危ないにも関わらず、監視を怠っていたことを後悔する。

・・・尾崎は、屍鬼壊滅の方法を探すため、屍鬼として起き上がりつつある嫁を人体実験に利用し始める。
屍鬼を倒すためとはいえ、病院で行わる凶行。
尾崎は完全に人の一線を超えてしまう。

それを知った静信は尾崎と完全に決別し、屍鬼側の人間となりつつあった。

果たして、残された者が出来ることはあるのか・・・


【読書感想】

この第四巻では、屍鬼達の苦悩が書かれると同時に静信と尾崎の対立が描かれます。
徹のように、屍鬼となったことに悩み、精神を潰す者。
一方、屍鬼となったことに喜び、吸血するだけでは飽きたらず、暴行と殺戮の限りを尽くし、完全に人としての箍が外れ制御が効かなくなる者。

それぞれの思いが交差し、屍鬼も人間もあらゆるバランスが崩れていきます。

そして、尾崎は屍鬼を倒す方法を見つけ出します。
しかし、すべてが遅すぎたのです。
読む限り、人間側が打つ手はもうないように思えます。

尾崎はどうするのか。
静信はどうして、屍鬼のトップである砂子に直接面会をしたのか。
物語はいよいよクライマックスへ突入します。


【良い点】
・多くの登場人物の心情が大きく変わる
・絶望感
・屍鬼のルーツがわかる